まどかさんはフランスと日本を往復している。心配が募った。でも今回の帰国は飛行機での移動に困難が伴う前だった。とりあえずほっとしたが、この先の世界はどうなるのだろう。平和への祈りを音楽に託した武満さんが生きていらしたら、なんと言うだろう。

さて、ピアノ独奏曲のみの創作でみると《ピアノ・ディスタンス》から次作の《フォー・アウェイ》までに約10年の隔たりがある。その間に作曲家として武満は世界の注目を集める存在になっていた。なんといっても1967年の小澤征爾指揮、ニューヨーク・フィルのために作曲された琵琶と尺八、オーケストラのための《ノヴェンバー・ステップス》の成功が大きかった。武満は1970年には大阪万博の鉄鋼館での大仕事を済ませ、会場に来ていたフランスのサラベール社と契約、1971年には初めてフランスで武満特集が組まれた。『ル・ソワール』紙が「Enfin Takemitsu vint aux Journées de Musique Contemporaine(ついに武満が「現代音楽の日々」音楽祭へやってきた)」と記すほどの歓待ぶり。

武満のフランスの音楽関係者との縁は広がり、インドネシアのバリ島へのドキュメンタリー番組制作の旅に誘われ、同行している。建築家や医者に交じり作曲家のI. クセナキス、B. ジョラス、音楽学者で評論家のM. フルーレがいた。そこで武満が受けた衝撃は計り知れない。武満は西洋を見て戦後の焼け跡から励んできた。が、西洋は東洋に目を向けていたのだから――。加えて日本とバリ島の音楽は同じアジアであるにもかかわらず、あまりに異なっていた。その帰国後に書いたのが《フォー・アウェイ》である。武満特有の鐘のような響きに動きのある付点がつき、ガムランのメロディーを担うガンサの動きを思わせる。《フォー・アウェイ》は19735月にロンドンで開催された音楽祭の武満特集でロジャー・ウッドワードにより初演された。

深見まどかピアノリサイタル2026-イメージ写真

《こどものためのピアノ小品》は「微風」と「雲」と2曲あり、ピアニストの井上直幸さんが受け持つNHK教育テレビの『ピアノのおけいこ』のために書かれた。この番組では初級・中級・上級クラスが設定されている。武満さんのこの曲はどのクラスに入ると思います?

なんと初級です!

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